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訪問薬剤管理指導の展望
-ケアオフィス代表・薬剤師 水野康弘先生
水野先生は、現在薬剤師として病院勤務の傍ら、在宅での訪問薬剤管理指導業務にあたっています。在宅医療に関しては国内でもいち早く民間企業と組み、ハイテク在宅医療のしくみを作り上げた実績をお持ちです。
在宅医療への薬剤師のかかわりについて、お話を伺いました。
薬剤師による在宅支援のニーズ
水野先生はもともとは大学病院薬剤部の出身で、その当時は「大学病院が在宅医療に取り組んでいれば事足りる」と思っていたそうです。しかし、実際に患者と接するうちに「こういう疾患には対応していますか?」、「近所の病院でも在宅医療を受けられますか?」といった声を聞くことが多くなりました。そこで、「在宅医療は大学病院だけが担えば良いというものではない」と思うようになったそうです。これが、民間の在宅医療センターの構想になり、IVH、HITなどを活用した「ハイテク在宅医療センター」の立ち上げにつながりました。
現在、水野先生が取り組もうとしているのが、「在宅療養支援薬局」です。06年4月の診療報酬改定で在宅療養支援診療所が制度化されたのは記憶に新しいことですが、在宅療養支援診療所だけでは手不足なのが実情であり、これに対応可能な在宅療養支援薬局の存在が必要と水野先生は強調します。
実際には山積する問題点
現在、在宅支援ができる薬局の必要性は理解されているものの、実際には問題山積であるとのこと。その問題点について、水野先生は次のように指摘します。
「訪問薬剤管理指導を、薬剤師は医師から依頼されますが、依頼する側としては顔も見たことのない薬剤師にそんなことを頼めるわけがない。顔を見たことがあったとしても、その薬剤師のレベルがわからないと安心して任せることはできません。医師が自分の受け持ちの患者の診療を他の医師に依頼するときは、患者の的確な情報を診療情報提供書にまとめ提供します。実際に訪問薬剤管理指導を依頼される薬剤師にも簡単な患者情報提供がされますが、それは特定の薬剤師に限られ、一般的には見も知らない薬剤師には何の情報も提供されないし依頼もされないでしょう。このような状況では多くの薬局が訪問薬剤管理指導を依頼されることはないでしょう。また患者自身で訪問薬剤管理指導を依頼する薬剤師を選択することもないでしょう。すべてが医師の裁量に左右されています。薬剤師の中には訪問薬剤管理指導を簡単に考えている方もいるようです。この業務は薬剤師にとってハイリスクな業務であることを理解されていません。ただ処方された薬を患者宅へ届けるだけではありません。届けるだけなら宅配業者に任せればよいことです。医師が期待していることは、適切な薬剤情報提供やコンプライアンス、副作用と考えられる自覚症状の有無の確認等さまざまなことがあります。なかでも患者への情報提供といっても不適切な情報もあります。特に副作用情報では、滅多に起きないものについても患者にしてみれば言われれば起きるのではないかと不安になり、そのため拒薬する患者も出てきます。患者への説明責任もありますので難しいところです。また患者からの情報収集にしても患者自身が医師や薬剤師にどれだけ真実を話しているかも課題です。ある報告では20~30%は本当のことを言っていないとあります。薬剤師として患者の自覚症状やコンプライアンスをどれだけ的確に情報収集できるか難しいことです。事前の適切な患者情報がなければ不可能なことです。このことからも普段から医師と薬剤師の間に人間関係ができていて、コミュニケーションが常に取れる状況でなければ成り立ちません。そう考えると、医師と薬剤師、いいかえれば診療所を中心とした医療機関と薬局は、よりつながりを深くしなければならないということになります。医薬分業の形態からすると、マンツーマンでなければ難しいかも知れません」。
面分業を推進する行政の意向とはギャップの生じる部分でもあります。
また、そうした人間関係を構築した上で、患者の情報をいかに共有するかも重要となります。「処方箋には傷病名がありません。過去の患者の既往症もわかりません。推測で判断するだけではリスクが高く、何度も繰り返しますが、やはり医師とのコミュニケーションのなかで、情報を把握しておくことが必要であり不可欠なことです」。
在宅医療に対してかかりつけ薬局ができること
このような問題はあるものの、薬剤師としてはできるところから実行していくべきと水野先生は主張します。
例えば、薬局として、在宅患者のコンプライアンスをいかに高めるかを考えた場合、一包化が必要不可欠ではないかというのが先生の持論です。在宅患者は高齢者が多いため、合併症も少なくありません。そのため処方薬の種類数も多く、服用時点も複雑になりがちです。残薬のチェックをする場合も、日付入りの一包化製剤なら、確認が容易です。
「最初は、どこの患者宅を訪ねても玄関先で薬を渡すだけです。しかし訪問を重ねるうちに色々と話ができるようになり、玄関先から居間に通されるようになる。そうすれば、残薬のチェックや、自覚症状の変化もわかるようになります。こうした積み重ねを続けていくことです」と、在宅への介入方法には王道はないことを強調します。
「保険薬局は、ぜひ居宅療養管理指導の申請をし、介護保険での在宅訪問薬剤管理指導業務に参入していってほしい。地域の薬局にとっては、大きな財産になるはずです。なぜなら、病院の大型門前薬局には、地域に密着した在宅活動はできないからです」。かかりつけ薬局の機能を発揮するためには、訪問薬剤管理指導が欠かせないと力説されました。
