Serendip Pharmacy & Pharmacist

教 育

投薬を巡る医療事故について
第2回 アクシデントの70%以上はヒューマンエラー

-医療教育研究所 佐藤仁人 先生


調剤過誤が新聞沙汰になったことが過去に何度かありました。リークがあったのかも知れません。隠してもだめだということです。まさにディスクロージャーの時代です。

薬剤師賠償責任保険による薬剤に関わる報告事例を見ますと、1998年1月1日から2001年1月31日までで、事例数の合計は74件。内訳は、薬の取り違えが33件(44.6%)、秤量の誤りが10件(13.5%)、力価の計算間違いが9件(12.2%)となっており、これだけで52件、全体の70.3%です。

ここで言えることは、アクシデントの70%以上が「ケアレスミス」というヒューマンエラーであることです。

一方、日本薬剤師会は、01年に全国の薬局からインシデント事例を集めました。調剤ミスの内容を見ると、「同じ医薬品の規格間違い」、「錠剤・カプセル剤の係数の間違い」、「他剤を調剤」の順になっています。いずれもヒューマンエラーです。

こうした調剤ミスの原因について、日本薬剤師会の報告では、注意力の不足、自己判断や思い込みによる処理、調剤後の監査が不十分、処方せんの読み間違い・無理な判断など、と続きます。処方せんの読み違い、無理な判読ということは、本来疑義照会が必要なのにしていないというケースが含まれていると思われます。していないとなると、これは業務怠慢ということになります。

以上のことから言えることは、アクシデントであれインシデントであれ、その原因の大部分はヒューマンエラーであるということです。


次に調剤過誤の発生割合を、調剤経験年数別にみた資料があります。

1年未満が45%、2年経験者が9%、3年経験者が20%、5年経験者が13%、10年以上の人は経験者も13%となっています。この結果からいえるのは、まず経験が重要ということです。人は経験によって成長していきます。しかし、10年以上の調剤経験者でも13%を占めることを考えると、経験のみではエラーを十分防ぎきれないことが明白です。経験でカバーしきれないエラーを、なくす方法を考えなければいけないのです。

経験以外に要素はないのでしょうか。「調剤エラー」や「調剤過誤」と薬剤師の経験・性格との相関をみたデータがあります。どうも経験年数以外に、個人の性格も相関があるようです。性格を直すわけには、なかなかいきませんがコントロールすることは可能なはずです。性格のコントロールについては次回に触れさせていただきます。

では、どういう工夫をしたら良いのかですが、複数の薬剤師が調剤を担当する、患者に説明しながら薬剤を交付する、2回以上の薬剤監査を行う、などがまず考えられます。「患者に説明しながら薬剤を交付する」時にも、必ず一度薬袋から出して確認してもらうことが必要です。


どの時点で調剤ミスに気づいたかを見てみると、薬剤交付後が42.5%、監査時が34.3%、薬剤交付時が11.9%の順でした。これは日本薬剤師会が調査した、インシデント事例4,044例の分析です。薬剤が患者さんに渡ってしまってから気づくケースが多いことが分かります。患者さんに薬が渡る前にいかにミスに気づくかがエラーの防止のポイントといえます。

性格的には、やはりせっかちな人ほどミスを犯しやすいといえます。日本薬剤師会でも性格分析ソフトのCDを作成していますので、活用してみるといいでしょう。日本薬剤師会の「調剤事故防止マニュアル」でも、調剤の基本姿勢として「細心の注意を払い正確に薬を調製することである」としています。また「スピード第一主義ではない」ともしていることからも何が重要かよくわかります。

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