New Movement for Pharmacy
Serendip Pharmacy & Pharmacist
教 育
投薬を巡る医療事故について
第3回 ソフトとハードの組み合わせで効果
-医療教育研究所 佐藤仁人 先生
安全管理におけるリスクマネジメントとしては、日常業務の中で常に事故防止を心がけることが大切です。安全管理にはソフト面とハード面があります。
ハード面では例えば、棚の薬剤を「アイウエオ」順にならべるのではなく、薬効群で分けるのもひとつの方法です。糖尿病薬など、危険な薬により注意を払うことになります。糖尿病薬のみならず、心臓関係、精神科用薬、小児薬などは、別の棚にした方がよいでしょう。ハードの工夫は目に見える工夫としてエラーの防止に一定の効果が期待できます。
一方、ソフト面は自分の性格をコントロールすること、いわば常に(安全管理を)“心がける”ことが要求されます。そのソフト面の強化と継続性をいかにして勧めていくかが、エラーの減少のキーとなります。
そしてソフトとハードを組み合わせることによって総合的な効果が期待できます。
調剤過誤防止に向け、日本薬剤師会は平成12年に日常業務の総点検と改善の実行を求め、同時に「調剤業務の流れと調剤過誤防止対策」のフローチャートを示しています。
このフローチャートのコピーを調剤室の見える所に貼っておくことにより、朝、調剤室に入ったときに“今日も一日、安全管理に気をつけよう”と無意識の中で意識することになります。又、この日本薬剤師会の調剤事故防止マニュアルでは自己点検表も作成されています。この点検表を利用して毎日業務終了後にチェックすることにより問題点が浮き上がってくることが期待できます。毎日チェックするということは、ISOにおいても安全管理の基本になっています。1日の業務が終わったあとに記入する習慣をつけることにより、「気づき」が生まれます。このような工夫により次第に性格がコントロールされ、無意識の中で常に安全管理に気をつける習慣が身についてくるといえます。
リスクマネジメントの特徴ですが、体系的、科学的、組織的に捉えておくことが重要です。体系的には、まずマニュアルです。守るべきことを文章で作っておくことです。これが最低条件のことです。マニュアルを遵守し、さらに再評価していくことも必要です。半年に1回は見直しを行うべきでしょう。マニュアルに盛り込まない対策は業務改善策として月に一度は見直して常に安全管理を向上させていく心構えが必要です。もちろんインシデントに基づいた見直しです。科学的にエビデンスに基づいた再発防止策を講じていくことです。
リスクマネジメントのポイントは事故防止の方策そのものでなく、インシデントを減らすことです。「ハインリッヒの法則」というものがあります。ひとつのアクシデントの影には29の中小の事故があり、300のインシデントがあるという法則です。インシデントの防止こそが重要というわけです。また、責任・役割の明確化を図り、再発防止のための勉強やトレーニングを実施することも重要です。
最後にインシデント報告の意義について触れておきます。インシデントと事故の差は、防御機構が作動したかどうかの差です。インシデントの発生原因の検討することが、事故防止につながります。
報告の際、インシデントの事実を書くことから始まりますが業務改善に役立てるためにはプロセスと背景が重要です。プロセスと背景を分析することにより、インシデントが減れば、結果として事故も減ることになります。
