Serendip Pharmacy & Pharmacist

教 育

地域薬局が協同して訪問服薬指導を推進する
~長崎市のPネットの取り組み


「薬剤師の先生方は、もっと薬局の外に出て患者さんがベッドサイドで服薬している場面まできちんと見て欲しい。そして服薬状況をしっかり確認し、飲めていなければその患者さんがどうすれば服薬できるかの提案を、我々医師にして欲しい。薬の運び屋で終わらないでいただきたい」―在宅ホスピスに取り組む、長崎市の井上病院の松尾誠司先生は、20人近く集まったPネット(長崎薬剤師在宅医療研究会、以下Pネット)のメンバーに向けて、在宅医が求める薬剤師の役割について、このように熱く語りかけました。

担当薬剤師不在時にはサポート薬局が協力

これは、2008年9月に行われたPネットの研修会の模様です。Pネットとは、長崎市内の有志の薬局で作る会。2007年に発足し、定期的に在宅医療に関する研修会を開催しています。

長崎市には、もともと在宅療養患者を受け入れる医師の会「長崎在宅Dr.ネット」があります。同ネットは、「在宅で療養したいが主治医が見つからない」という患者さんに、在宅担当医師をコーディネートするものです。主治医と副主治医の2名の担当医を決めて、互いにサポートしあって在宅診療を行っていく体制を取っています。Pネットは、その長崎在宅Dr.ネットの受け皿として発足したもの。在宅療養を始める患者さんで、訪問指導を実施する薬局が決まっていない場合、Pネット事務局に連絡が入ります。事務局は、メーリングリストで担当薬局を募集し、調整して担当薬局を決定する仕組みです。その際、担当薬局を支援するサポート薬局を同時に決めます。サポート薬局は、緊急で薬を届ける必要が生じたにも関わらず担当薬剤師が出掛けていてすぐに対応できない場合に、代わりに薬を届けるといった役割を担います。

調剤報酬上、サポート薬局が薬を届けた場合、居宅療養管理指導料や在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料などの在宅に関する点数は算定できませんが、そこはお互い様。Pネット世話人の1人である、あおぞら調剤薬局の中野正治氏は、「サポート薬局に出動してもらうことは、そう多くないので互いに助け合う気持ちでやってもらっています」と話します。

現在、Pネットに参加する薬局は24薬局。そのほとんどが、いわゆる“街の薬局”。薬剤師が1名だけという薬局もあります。「いざというときのサポートが確保されていれば、マンパワーがなくても訪問指導を始めやすい」と中野先生。1薬局では難しい『24時間365日対応』を可能にするための、薬局間で協力しあう仕組みだといいます。

定期的な研修会で知識と技術を学ぶ

さらにPネットでは、在宅訪問服薬指導を実践する上で必要な知識と技能を習得するため、定期的に研修会を開催しています。冒頭の松尾先生の講演は、その一環です。これまでに行った研修会のテーマは、(1)居宅療養管理指導料の算定、(2)輸液調製の実習、(3)緩和ケアにおける麻薬性鎮痛剤について、(4)在宅におけるバイタルサインの見方、(5)簡易懸濁法、(6)褥瘡、(7)糖尿病療養指導の要点とインシュリン自己注射および自己血糖測定の実際、(8)訪問薬剤管理指導症例検討会―などです。研修会は、知識と技術を学ぶだけでなく、訪問指導を手掛ける薬局の仲間の活動報告や現場での問題点を相談しあう場にもなっています。

現在までにPネットで受け付けた在宅患者件数は15件。ただし、Pネットを経由して患者さんを担当したのがきっかけで、その後、医師や訪問看護師から直接、訪問指導の依頼が薬局に来るといったケースも増えています。そうしたケースも含めれば、会員薬局が訪問指導に関わるケースは着実に増えているといえそうです。

薬剤師不在で進んだ在宅を変えたい

Pネットを立ち上げたとき、長崎在宅Dr.ネットの医師の1人から「私たちは、これまで薬剤師なしで在宅診療をやって来た。薬剤師の先生方が、何ができるかを見せてほしい」と厳しい言葉をいただいたそうです。

「長崎在宅Dr.ネットの先生は、我々に期待の気持ちと『薬剤師、もっとがんばれ』というエールを込めて言ってくださったのですが、この言葉はずしりと重かった。先生方に『薬剤師がチームに入って在宅が変わった、薬剤師がいてくれて良かった』と言われるような活動をしていかなければと思いました」と中野先生は話します。

地域の薬局が協同して在宅患者の訪問服薬指導を受けようというPネットの取り組みは、まだ始まったばかり。今後の活躍が期待されます。

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